2005年から書き始めたブログの別館。本編の再掲載と新しい記事を随時アップしています。
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2010年2月3日 本編アップ分からの再掲載です。
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毎日通勤で乗車する朝の満員電車。
それはもう、かなり過酷な環境。
寄せる人波の物理的エネルギーを受け止め、
大音量のインナーフォンから漏れる鬱陶しいシャカシャカ音や、
前夜の焼き肉の名残を引きずる不快な口臭に晒(さら)される。
逃げるスペースなど無いのでジッと我慢するしかない。
一日のはじまりとしては険しい空間です。
が、
それ故にちょっとしたこと、特に、
興味深いキャラに遭遇したりするとキモチがほころぶこともある。
今朝、幸運にもそんな場面に出会うことができた。
通常、朝の満員電車の中で
普段のテンションのまま会話を交わせる人は少ないだろう。
でも、通勤時間帯に電車を利用しない人にとっては別なのかもしれない。
特に、二人以上の連れで乗車してくる若者やおばさんは
自分たちだけの世界に入りやすい。
周囲に全く馴染まない、生活感溢れる話が延々と続く。
それと、悪気はないのだろうが、
乗車マナーに疎(うと)いというか
会話であれば声量、カバンであれば持ち方、置き方など
気遣いの機転が利かないのも特徴。
今朝遭遇したのは、若者の二人連れです。
片方の人物は会話の内容から推察すると鉄道ヲタク(*以下 鉄ヲタくん)。
それっぽいメガネを掛けていて、外見上もバッチリとキャラが立っている。
面白そう。
暫しの間、彼を観察です。
・
・
だらしなくグジャっと広がる大きなバッグを入り口のドア付近に
デンと置いている。電車に乗り込んだ際、後ろからところてん式に
押された私は、そこで逃げ場を失った。
こういう時、私は必ずバッグを意識的に踏むようにしている。
今日も迷わずに踏んだ。おもいっきり強めに。
鉄ヲタくんも、一応、バッグは気になっているようだったが、
その観点が常人とはズレている。
『ヤバくね。次も開くドアはこっちだよ。
降りる駅じゃバッグの中身、メチャメチャになってんじゃね。
アッ!!! そんなことないか。
●●駅からはずっと反対側だからOKだ! やったぁ!』
って言うか、「やったぁ!」って、何か良いことあったか?(笑)
しかも、俺、まだ君のバッグしっかり踏んでるよ。
ちなみに頭上の網棚、目一杯空いてますけど・・・。
満員でみんなが息をつめている中、
鉄ヲタくんの大きな声だけが聞こえてくる。
相方が向かう目的地までの経路を教え始めたようだ。
が、
鉄ヲタ知識の一方的フル全開で不要な情報ばかり。
おまけに、ルートパターンが多過ぎて相手が混乱していることに
本人は全く気づいていない。
結局、困惑していた相方は、
鉄ヲタくん曰く・・・お台場を通過するから超カッコ良い(らしい)
“臨海高速鉄道” 経由を強く奨められ、
誰がどう考えても遠回りになる経路を選んだようだった。
ひとしきり乗り換え経路の説明が終わったと思ったら、
今度は「携帯メール」に話題が変わった。
携帯を買い換えた去年の四月以来の交信履歴を披露している。
『●●が三位、●●が二位、交信1,400回が一番多いんだけど、
誰だと思う? ジャジャーン♪ お前、お前! 凄いッ!!』
って言うか、「凄いッ!」って何が凄い?(笑)
それ以前に、1,400回もやりとりしていたら相手も分かってるでしょ。
しかも、俺、すでに君のバッグを踏みながら引きずってるし・・・。
途切れなく喋る鉄ヲタくん。
会話のネタは尽きない。
メールの話題にリンクして、
今度は “カノジョ” にまつわる話が始まった。
どうやら現在、鉄ヲタくんに “カノジョ” はいないらしい。
そして、鉄ヲタくんは “カノジョ” Get! に向かう際の
自分のスタイルを話し始めた。
沈黙の車内で空気が変わり、何人かの聞き耳が立ったように感じた。
私のキモチがほころぶのはこんな瞬間だ。
『俺ってさぁ、奥手(おくて)なんだよね』
「何言ってんだよ。そんなことないじゃん」と相方が突っ込んだ。
『アッ!なぁ~んだ、知ってたのかぁ。
そう、俺、玉砕型なんだよ。玉砕! 玉砕!』
って言うか、何で急に真逆タイプに変化できる?(笑)
そもそも相方は「玉砕型」って言ってないし・・・。
そして、この時周囲で反応があった。
「玉砕型」と聞くにつけ、誰もが彼の人間そのものに興味が湧いて
実体が見たくなったのだろうか、
耳を立てていた周りの乗客の頭が鉄ヲタくんの顔の見える方向に
揃って動いたように感じた。
が、留まった時間はわずか。
チラ見で確認を終えた皆さんの顔の向きは、
示し合わせたかの如く、サッと一斉に、瞬間的に元の位置に戻った。
間髪おかず、雲形のフキダシが乗客の頭上に浮き上がり、
【お前、玉砕以前だろッ!】
【出直して来い!】
【一生無理だろうなぁ・・・】
そんなセリフがあちこちで踊っているように見えた(・・・気がした)。
それは、朝イチでMyベストの経路を案内できた満足感だったのだろうか?
乗り換え駅に着き、遠回りになる相方を車両に残して
鉄ヲタくんは極めて幸せそうな表情でニコニコしながら下車していった。
だが、混雑で見えない足下(あしもと)で何があったのか彼はまだ知らない。
私の靴底は彼のバッグの中の何かを確実に踏み潰していたのだ。
感触的には、多分、おにぎりが玉砕したんだと思う。
ホントに玉砕しちゃったねぇ。
ごめん、鉄ヲタくん。
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毎日通勤で乗車する朝の満員電車。
それはもう、かなり過酷な環境。
寄せる人波の物理的エネルギーを受け止め、
大音量のインナーフォンから漏れる鬱陶しいシャカシャカ音や、
前夜の焼き肉の名残を引きずる不快な口臭に晒(さら)される。
逃げるスペースなど無いのでジッと我慢するしかない。
一日のはじまりとしては険しい空間です。
が、
それ故にちょっとしたこと、特に、
興味深いキャラに遭遇したりするとキモチがほころぶこともある。
今朝、幸運にもそんな場面に出会うことができた。
通常、朝の満員電車の中で
普段のテンションのまま会話を交わせる人は少ないだろう。
でも、通勤時間帯に電車を利用しない人にとっては別なのかもしれない。
特に、二人以上の連れで乗車してくる若者やおばさんは
自分たちだけの世界に入りやすい。
周囲に全く馴染まない、生活感溢れる話が延々と続く。
それと、悪気はないのだろうが、
乗車マナーに疎(うと)いというか
会話であれば声量、カバンであれば持ち方、置き方など
気遣いの機転が利かないのも特徴。
今朝遭遇したのは、若者の二人連れです。
片方の人物は会話の内容から推察すると鉄道ヲタク(*以下 鉄ヲタくん)。
それっぽいメガネを掛けていて、外見上もバッチリとキャラが立っている。
面白そう。
暫しの間、彼を観察です。
・
・
だらしなくグジャっと広がる大きなバッグを入り口のドア付近に
デンと置いている。電車に乗り込んだ際、後ろからところてん式に
押された私は、そこで逃げ場を失った。
こういう時、私は必ずバッグを意識的に踏むようにしている。
今日も迷わずに踏んだ。おもいっきり強めに。
鉄ヲタくんも、一応、バッグは気になっているようだったが、
その観点が常人とはズレている。
『ヤバくね。次も開くドアはこっちだよ。
降りる駅じゃバッグの中身、メチャメチャになってんじゃね。
アッ!!! そんなことないか。
●●駅からはずっと反対側だからOKだ! やったぁ!』
って言うか、「やったぁ!」って、何か良いことあったか?(笑)
しかも、俺、まだ君のバッグしっかり踏んでるよ。
ちなみに頭上の網棚、目一杯空いてますけど・・・。
満員でみんなが息をつめている中、
鉄ヲタくんの大きな声だけが聞こえてくる。
相方が向かう目的地までの経路を教え始めたようだ。
が、
鉄ヲタ知識の一方的フル全開で不要な情報ばかり。
おまけに、ルートパターンが多過ぎて相手が混乱していることに
本人は全く気づいていない。
結局、困惑していた相方は、
鉄ヲタくん曰く・・・お台場を通過するから超カッコ良い(らしい)
“臨海高速鉄道” 経由を強く奨められ、
誰がどう考えても遠回りになる経路を選んだようだった。
ひとしきり乗り換え経路の説明が終わったと思ったら、
今度は「携帯メール」に話題が変わった。
携帯を買い換えた去年の四月以来の交信履歴を披露している。
『●●が三位、●●が二位、交信1,400回が一番多いんだけど、
誰だと思う? ジャジャーン♪ お前、お前! 凄いッ!!』
って言うか、「凄いッ!」って何が凄い?(笑)
それ以前に、1,400回もやりとりしていたら相手も分かってるでしょ。
しかも、俺、すでに君のバッグを踏みながら引きずってるし・・・。
途切れなく喋る鉄ヲタくん。
会話のネタは尽きない。
メールの話題にリンクして、
今度は “カノジョ” にまつわる話が始まった。
どうやら現在、鉄ヲタくんに “カノジョ” はいないらしい。
そして、鉄ヲタくんは “カノジョ” Get! に向かう際の
自分のスタイルを話し始めた。
沈黙の車内で空気が変わり、何人かの聞き耳が立ったように感じた。
私のキモチがほころぶのはこんな瞬間だ。
『俺ってさぁ、奥手(おくて)なんだよね』
「何言ってんだよ。そんなことないじゃん」と相方が突っ込んだ。
『アッ!なぁ~んだ、知ってたのかぁ。
そう、俺、玉砕型なんだよ。玉砕! 玉砕!』
って言うか、何で急に真逆タイプに変化できる?(笑)
そもそも相方は「玉砕型」って言ってないし・・・。
そして、この時周囲で反応があった。
「玉砕型」と聞くにつけ、誰もが彼の人間そのものに興味が湧いて
実体が見たくなったのだろうか、
耳を立てていた周りの乗客の頭が鉄ヲタくんの顔の見える方向に
揃って動いたように感じた。
が、留まった時間はわずか。
チラ見で確認を終えた皆さんの顔の向きは、
示し合わせたかの如く、サッと一斉に、瞬間的に元の位置に戻った。
間髪おかず、雲形のフキダシが乗客の頭上に浮き上がり、
【お前、玉砕以前だろッ!】
【出直して来い!】
【一生無理だろうなぁ・・・】
そんなセリフがあちこちで踊っているように見えた(・・・気がした)。
それは、朝イチでMyベストの経路を案内できた満足感だったのだろうか?
乗り換え駅に着き、遠回りになる相方を車両に残して
鉄ヲタくんは極めて幸せそうな表情でニコニコしながら下車していった。
だが、混雑で見えない足下(あしもと)で何があったのか彼はまだ知らない。
私の靴底は彼のバッグの中の何かを確実に踏み潰していたのだ。
感触的には、多分、おにぎりが玉砕したんだと思う。
ホントに玉砕しちゃったねぇ。
ごめん、鉄ヲタくん。
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東京の下町(深川)で生まれて育ちました。ギター演奏と写真撮影が趣味。神楽坂と北海道が好きです。
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ギタリストの岸部眞明さんの音楽に出会って感化され、46歳の時からギターを弾き始めました。下記のページに録音音源をアップしています。
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