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中高生の頃、怪我した腕を三角巾で吊って
カーディガンを羽織る人や
片足だけ靴を履いて松葉杖で歩いている同級生を見て
うらやましく思ったことがある。
痛々しい姿
↓
同情した女子が注目
↓
悲劇のヒーロー
勝手にこんなイメージを持ってしまい
何か特別な存在に見えて憧れていたのである(笑)
確かに直ぐに治るものではない、
が、かと言って生き死にに関わるものでもない。
放っておいても数週間後には治癒することが分かっているのに
それまでは可哀相なハンディキャッパーとして
周りから気を遣ってもらえる。
整形外科系の軽度なケガには微妙な心地よさというか、
悲壮にならずにすむ “包帯パラダイス” とも言えそうな
独特の趣きがあるように思う。
病院に入院している整形外科の患者さんが大勢の友人と
楽しそうに談話室で会話している場面を目にするが、
あれはこの類の怪我の特性をよく表しているのではないだろうか。
で、本題。
数日前からギックリ腰の手前かと思うほどの
酷い腰痛に見まわれていたカミサン。
一昨日はかなりの形相で職場に向かった。
が、悪いことは続く。
勤務中に固定物に足先をおもいっきりぶつけたらしい。
まさに踏んだり蹴ったりである。
帰宅途中にカミサンから届いたメールには、
“右足の小指、骨折したかもしれない”
と、書かれていた。
一緒にタクシーで帰ることにして駅で待ち合わせ。
それなりに心配して待っていたところに
足を引きずりながらカミサンが現れた。
意外にも表情が明るい。
というか、嬉しそうである。
「大丈夫?」と訊くと、
被害に遭った時点から現在までの様子を
捲くし立てるように詳しく説明し始めた。
・
・
足先が出ちゃうサンダルタイプの履物だったのよね
おまけに保育園には固定物がたくさんあるのよ
右足の小指が凄いことになってるから後で見せてあげる
ぶつけた後、普通は痛みが退いてくるよね。
でも、どんどん痛くなってくるのよ。分かる?
保育園から●●駅まで必死に歩いたわ。も~タイヘン。
スマホで調べたんだけどコレって骨折の症状。絶対に骨折よ!
とにかく冷やしたほうが良いんだと思うんだけど
ウチに湿布あったかしら?
確かおばあちゃんが肋骨を痛めた時のロキソニンテープがあったわよね
あ・・・。無いと困るから地下の薬局で湿布を買ってきて
明日、休暇でよかったわ
病院は●●●●がイイみたいなんだけどどう思う?
コレ、あなたが骨折した時の症状と同じよね。
絶対そうだわ。やっぱり骨折だと思うのよ。
ねぇ、どう思う?
・
・
どう思う? と、問われても困ってしまう(笑)
主旨の定まらないカミサンの言葉が矢継ぎ早に間隙なく飛び出し、
最後には本人も忘れている40年前の私の部位違い(手の薬指)の
骨折まで登場してきた。
ここまで私が発した言葉は冒頭の「大丈夫?」の一言だけである。
カミサンは一人で嬉々としている。
骨折したかもしれぬのに何をそんなに嬉しそうにしている?(笑)
帰宅してもハイテンションは変わらなかった。
怪我したことをスマホであっちこっちに報せ、
二女が帰ってくると紫色に腫れた足先を見せ、
再び最初から状況を細かく説明していた。
何が彼女を高ぶらせているのだろうか?
じきにその理由がおぼろげながら分かったような気がした。
『冷やさないといけないんでさっき買った湿布出して』
「いや、今は氷でガンガン冷やしたほうがいいでしょ」
『あぁ、そうね。じゃあ、用意してくれるかな』
リビングにベタ座りで足を伸ばしているカミサン。
氷を詰めたポリ袋を渡すとそれを患部に当て、
ソファに背中をあずけて超ユル~い体制でリラックスし始めた。
私が買い物の荷物をこまごまと収納していると
テレビの音声が流れ始め、同時にカミサンの声も聞こえてきた。
『さ~ぁ、どうせ動けないから録画したドラマをどんどんを見なきゃ』
(ん? どうせ動けないから・・・?)
『貴方、さっき買ってきてくれたお弁当の中身は何?』
「天丼と天玉丼を買ったけど」
『なぁ~んだ・・・』
(お気に召さなかったようです)
『じゃ、しょうがないから天玉丼でいいや』
(しょうがないから・・・か・・・)
『ワタシは立てないからここまで持ってきて』
(立てないから・・・?)
言われるがままお弁当をサイドテーブルまで持っていってあげると、
『あ、それとお茶もね』
そして、追いかけるように
『ホント、こういう時に気が利かないよね』
というセリフが付け加わった。
なるほど。
上げ膳据え膳の包帯パラダイスに身を置けると思ったワケか。
そりゃテンション上がるわな(笑)
お茶を淹れてお届けに参上すると、
トウの立ったお姫様はスマホをいじりながら
『ねぇ、ほら。完全に治るまで三か月は掛かるらしいよ』
(ほう・・・)
『コレ、治るまでだいぶ掛かりそうね』
(それで・・・)
『しばらくまともに動けないかもしれないわ』
(なるほど・・・)
私の目の前に来ると急に足の引きずり具合が大きくなるし、
つくづく分かりやすい人である(笑)
【追記】
受診したところ、結局骨折ではなく靭帯が切れていたみたいです。
全治四週間。希望通りの三ヶ月に非ず(笑)
・ゴーストライター
イチオシは「問題のあるレストラン」。
お気に入りの女優さんをずらっと揃えてもらえて
それと、派手な内容ではありませんが、
もう昨日のことになりますが、
一月三日の朝方、飼い犬の正吉が亡くなりました。
未明から息遣いが荒くなり
しばらく頑張っていたのですが、
結局、岸の彼方に行ったきり
こちらに戻ってくることができませんでした。
残念です。
腫瘍が見つかり手術をしてから昨日まで、
正吉とのこの一ヶ月間はとても濃密でした。
万全ではなかったけれど、
家族で時間をやりくりしながら
正吉を厚く見守ってあげることができて良かったと思います。
手術後の病理検査で悪性の腫瘍であることが分かり
少なからず覚悟していた私たちと同じように、
正吉自身にも予感するものがあったのでしょうか。
病院から家に戻った後は、
歩様も不自由な身体の状態でありながら
いつも以上に私、カミサン、娘に擦り寄ってきました。
そして、私たちを気遣ってくれたのか、
長男が帰省し母親がショートステイから戻った
家族の揃っているタイミングを見計るかのように逝ったのです。
最期、息を引き取る直前、
それまでグタッと横たわっていた正吉が顔を上げ、
みんなの顔を確かめ息をついた後で
ふうっと眠るように首を落としました。
人間のことが凄く好きな犬でした。
涙の一日が終わり、家の中を見渡してみると
空気の密度がとても薄いことに気付かされます。
家の雰囲気を構成する本当に大事な家族だったんです。
でも、もう何もしてあげられない。
病んでからも、それ以前の健常な時も
正吉にしてあげられたことが
もっともっとあったんじゃないかと
悔やむところは多いです。
正吉に対するイメージは
大きくなってもパピーの頃のままでした。
12年間一緒に暮らしてくれてありがとう。
楽しかったし、これからも忘れることはないよ。
お疲れさま、正吉。